• よくわかる腎臓病、腎臓病を正しく理解するために
  • 生活習慣と慢性腎臓病(CKD)
  • 慢性腎臓病(CKD)をご存じですか?

腎臓の働き

【監修】
順天堂大学名誉教授、(医)松和会 常務理事 富野 康日己 先生
大阪市立大学 大学院医学研究科泌尿器病態学 教授 仲谷 達也 先生(腎移植)

腎臓病は腎臓に生じた炎症によって引き起こされる腎炎(糸球体腎炎と尿細管・間質性腎炎)と、糖尿病などの全身の病気により糸球体に障害を起こすものがあります。腎臓に与える障害のうち、何らかの原因によって腎臓自体に障害が起こる原因不明のものを原発性(一次性)といい、腎臓以外によって起こるものを続発性(二次性)といいます。

最近、慢性腎臓病(CKD)や急性腎障害(AKI)という言葉が広く用いられています。これは国際的に提唱された新しい概念です。CKDが心臓疾患や脳梗塞の発症と関係するということがわかり、腎臓病を早期に発見し治療しようという考えです。CKDについては、「生活習慣と慢性腎臓病」で説明いたします。また、急性腎不全を扱うことの多い腎臓の専門家や集中治療室の専門家の中では、急性腎不全という病名の代わりに急性腎障害(AKI)という使い方が多くなってきています。

腎臓の働きが低下すると、さまざまな機能に障害が起こります。すなわち、尿による老廃物の排泄能の低下やからだ全体の調節機能低下、腎臓でつくられるホルモン分泌の悪化などです。その結果、たんぱく尿や血尿、脂質異常症(高脂血症)、むくみや倦怠感などの症状があらわれます。

腎臓の病気とその原因

おもな腎臓病には次のようなものがあります。

1. 原発性糸球体疾患(腎炎)

糸球体に生じた炎症により起こる病気で、腎炎の95%以上を占めます。この背景には免疫の異常がありますが、発症原因はいまだ不明な点が多く残っています。原発性糸球体腎炎は症状が出にくく、血尿やたんぱく尿があってもごく微量で、発病後も良くなったり悪くなったりを繰り返すケースも少なくありません。
原発性糸球体腎炎は症状によって、いくつかの病気に分類されます。また、腎臓の一部を採取して顕微鏡下で検査をおこなう腎生検(組織分類)によって、より細かく病気の確定を行います。また、病気の強さを判定し、その後の治療方針を決定し、予後の推定を行います。

表:原発性糸球体腎炎の組織病型分類とその特徴
微小変化群 急におこる大量のたんぱく尿で発症し、ネフローゼ症候群をきたします。ステロイドに対する反応は良好ですが、ときに頻回に再発します。
巣状糸球体硬化症 しばしば、大量のたんぱく尿がみられ、ネフローゼ症候群をきたし、進行性の腎障害を認めます。ステロイドの反応性はあまりよくありません。
メサンギウム増殖性糸球体腎炎(IgA腎症、非IgA腎症) 血尿やたんぱく尿が持続し、数年間の緩慢な経過をたどります。初期には高血圧や腎機能の低下を認めませんが、病変の強い場合は、進行性に腎障害が進行し、腎不全に陥ります。
膜性腎症 大量のたんぱく尿で発症し、ネフローゼ症候群をきたすことが多くあります。たんぱく尿の出現や回復を繰り返しながら、長い経過をたどることが多く、腎不全への移行は一般に少ないです。ステロイドの反応性は緩徐です。
管内増殖性糸球体腎炎 急性糸球体腎炎に認められる組織病変型です。多少の障害は残ることはありますが、多くの場合は治りきってしまいます。
半月体形成糸球体腎炎 臨床症状として急速進行性糸球体腎炎を呈することが多く、急速に腎機能が低下するため、早期から「ステロイド」の用量を増やしたり血漿交換などの積極的治療が併用されます。
膜性増殖性糸球体腎炎 しばしば、ネフローゼ症候群をきたします。ステロイドなどの反応は良好でなく、一般に、進行性の経過をたどり、腎不全に移行することが多いです。
硬化性糸球体腎炎 糸球体障害が進行し、糸球体病変の硬化(糸球体の目詰まりをおこした状態)の程度の強い、一種の終末像に近いものです。予後は不良です。

IgA腎症

IgA腎症は日本人に大変多く、原発性糸球体腎炎の一つで、その約40%を占めています。IgA(免疫グロブリンA)とは唾液、鼻汁、消化液などに分泌され、体外から異物が侵入するとき最も早く異物と反応する免疫に関与するたんぱく質の1つです。IgA腎症は、咽頭などに細菌やウイルス感染が生じたあとにつくられたIgAが、何らかの原因で糸球体に付着して炎症を起こします。症状としては、目に見えない程度の血尿とたんぱく尿が特徴です。症状が進行するとネフローゼ症候群の症状がみられることもあります。
IgA腎症は、10〜20年の経過で腎機能が低下する方もみられます。

2. 続発性糸球体疾患(腎炎)

腎臓以外の病気によって起こる腎臓病(糸球体疾患)を続発性糸球体疾患といいます。原因となる病気としては、膠原病[ループス腎炎、結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症(旧称:ウェジナー肉芽腫)など]、糖尿病腎症などの代謝異常(糖尿病、痛風、アミロイドーシスなど)のほか、悪性腫瘍、薬による副作用、感染症、妊娠高血圧症候群などがあります。次に代表的な病気について説明します。

ループス腎炎

ループス腎炎は全身性エリテマトーデス(SLE)という名前の病気(関節リウマチと同じ膠原病の一種)がもとで腎炎症状(たんぱく尿、血尿、むくみ、高血圧)が起こる病気です。20歳・30歳代の女性に多い病気です。かつてはSLEの患者さんでループス腎炎により腎不全となり亡くなるケースが多く、SLEの死因の第一位となっていましたが、現在は早期に薬物療法を行い症状の進行を抑えることができるようになりました。しかし、透析療法にまでいたるケースも少なくなく十分な注意が必要です。

結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発性血管炎

結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発性血管炎は炎症により腎臓やその他臓器の中・小動脈の血管に炎症・壊死がみられる病気です。いずれも発熱、体重減少、関節痛、筋肉痛などで発症し、血尿やたんぱく尿があらわれて急激に腎機能が悪化します。血管の異常は全身にわたり、肺出血や神経炎、皮膚出血、消化管出血などもみとめます。

糖尿病腎症

糖尿病の重大な合併症の1つで、続発性(二次性)糸球体疾患の代表的なものです。長く続いた高血糖によって腎臓の毛細血管がもろくなり、血液中のたんぱく質が外部に漏れてたんぱく尿が出るなど、最終的には尿をつくる機能が停止してしまいます。糖尿病では腎症を発症させないことが肝腎です。

腎硬化症

腎硬化症は高血圧により腎臓が障害を受ける病気です。高血圧の既往の長い患者さんが健康診断で血尿を伴わない軽いたんぱく尿と腎機能障害を認めた場合、この病気がはじめに疑われます。この病気は高血圧が無治療で放置された結果、腎臓の細い動脈に強い動脈硬化が発症し少しずつ進行したもので、慢性腎不全の原因となっています。しかし、血圧のコントロールが良くなると他の腎臓病と比べてその進行スピードは、ゆっくりとなる場合も多くみられます。一方、悪性の高血圧の患者さんで、急激に血圧が上昇し、頭痛や吐き気が強く、意識障害がある場合には悪性腎硬化症という病気が疑われます。この場合は早急に透析療法が必要となることがあります。

3. ネフローゼ症候群

腎臓病のなかで大量のたんぱく尿が出るタイプのものを、ネフローゼ症候群といいます。子どもに多く発症することが知られていますが、大人にも発症します。ネフローゼ症候群では一般に腎生検によって細かく検査し病気の確定を行います。
ネフローゼ症候群のうち原発性(一次性)のものには、微小変化群と呼ばれるタイプや膜性腎症、巣状糸球体硬化症、膜性増殖性糸球体腎炎があります。
一方全身の病気によって糸球体に障害がおよぶ続発性(二次性)の疾患には、糖尿病腎症、ループス腎炎(全身性エリテマトーデスを原因疾患とする腎障害)、関節リウマチ、腎アミロイドーシス、悪性腫瘍(がん)、妊娠高血圧症候群、薬による副作用などがあります。
たんぱく尿のほかの症状としては、低たんぱく(アルブミン)血症(血液中のたんぱく質・アルブミンが低下する状態)、高コレステロール血症、むくみ(浮腫)があり、泡状の尿や食欲不振、倦怠感、まぶたや下腿の浮腫、腹痛、水溶性の下痢などが出ることもあります。
大量のたんぱく尿が長期間続くと腎機能が悪化するため、長期間にわたり尿たんぱくを減らす治療を続ける必要があります。また血管が詰まる血栓症を合併することもあります。

4. 急性腎障害(acute kidney injury:AKI)

近年、急性腎障害の死亡率が高く、統一した診断基準の作成が必要となり急性腎障害(acute kidney injury:AKI)という概念が提案されました。一般にCKDが何年もかけて徐々に腎機能低下が進行するのに対し、AKIは急性に腎臓の機能が低下する病気です。AKIは、数時間から1週間と短期間に急激に腎臓の機能が正常の機能の半分以下に低下し、尿の量も低下してひどい場合は無尿となる病気です。原因は、脱水症状や多量の出血などによる腎臓への血流の減少、腎毒性の強い薬による副作用や長期間の血流低下などによる腎臓そのものの障害のほか、尿の通りみちに腫瘍や結石などができて閉塞し発症するものがあります。診察や検査により、原因を明らかにし、その原因の解除を目指します。AKIは、早期の治療と原因が解除されれば、数日間で腎機能は回復する可能性があります。

5. 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)

CKDは、(1)尿異常、画像診断、血液検査、腎臓病理所見で腎障害が明らかに認められる場合。 (2)腎臓のろ過機能(腎機能)の低下が認められる場合。 この(1)、(2)のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続することにより診断されます。CKDは腎機能の程度によりグレード分類(CKD1〜5)されています。CKDの進行は、心・血管病(狭心症や心筋梗塞、脳卒中など)の重要な発症リスクの因子となることが分かってきました。CKDの患者数は増加しています。CKDは早期発見と、腎臓専門医による治療が大切です。CKDについては、「生活習慣と慢性腎臓病」でさらに詳しく説明いたします。

6. 慢性腎不全

慢性腎不全とは腎臓の機能が徐々に低下し、「尿をつくる装置」であるネフロンが破壊され、腎臓のろ過能力が正常時の30%以下となり、体内の正常な環境を維持できない状態をいいます。
とくにろ過能力が10%以下になると尿毒症になり、さまざまな症状が現れます。尿量は末期まで健康な人と同程度ですが、夜間に増えるのが特徴(夜間尿)です。そして、最終的には尿量が減少し、乏尿になります。
この原因の代表的なものは、IgA腎症、糖尿病腎症、高血圧性腎障害(腎硬化症)ですが、それ以外にも多発性嚢胞腎、慢性腎盂腎炎、ループス腎炎、急速進行性糸球体腎炎など、多くの原因疾患があります。
末期慢性腎不全は今のところ残念ながら完全に治すことができないので、透析療法や腎移植が必要になります。