病気の進行と治療方法

薬物療法

腎臓病における薬物療法は、むくみや高血圧などの症状の改善を目的とした「対症療法」と、腎臓病の発症要因となる免疫系や血液の凝固系の異常に対する「原因療法」の2本だてで行われます。

対症療法

対症療法で用いられる薬には血圧を下げる降圧薬、むくみ(浮腫)の改善のため尿の排泄をスムーズにする利尿薬などがあります。

降圧薬:

腎炎の悪化要因の1つである高血圧を改善させる治療薬で、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)やカルシウム拮抗薬などが用いられます。ACE阻害薬とARBは、体内で血圧を上昇させるレニン・アンジオテンシン系の作用を抑制する薬剤です。一方、カルシウム拮抗薬は血管拡張作用によって血圧を下げる効果をもつ薬剤で、脳や心臓、腎臓などへの血流を促進させる薬剤です。

利尿薬:

尿の排泄をスムーズにする薬剤で、乏尿やむくみ(浮腫)の改善に用いられます。とくに腎臓の血流量と糸球体ろ過量を減少させない「ループ利尿薬」と呼ばれる薬剤(フロセミドやアゾセミドなど)が利用されています。さらに、このような利尿薬で効果が得られないネフローゼ症候群のむくみを改善するために、濃縮アルブミン製剤という血液製剤が併用されることもあります。

高脂血症改善薬:

腎臓病においては高脂血症などの合併症がみられることが多く、この場合、高脂血症改善薬が用いられます。

原因療法

腎炎の発症や進行には体内での免疫機構の異常が深く関わりをもつことが、認められています。このため、免疫機能を抑制する副腎皮質ステロイド(ステロイド)や、免疫抑制薬による治療が行われます。
腎炎やネフローゼ症候群ではステロイドの投与が第一に考えられます。腎炎やネフローゼ症候群が重い時は大量のステロイドを短期間内に点滴で投与する「ステロイドパルス療法」が行われます。しかし、この治療法だけで病状が改善しないときや重症のケースでは、免疫抑制薬、抗血小板薬、抗凝固薬などを一度に用いる「カクテル療法」なども行われます。また、ネフローゼ症候群のなかにはステロイドに抵抗する「ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群」と呼ばれる場合もあります。治療が長期間にわたる場合には、使用する薬剤の副作用に対する慎重な配慮も必要となります。

副腎皮質ステロイド:(ステロイド)

腎臓病で尿たんぱくの多い原発性糸球体腎炎や、全身性エリテマトーデスによるループス腎炎に対しては、第一選択薬としてステロイドが用いられます。糖尿病性腎症ではかえって病状を悪化させる可能性もあるところからステロイドは適応されません。
ステロイドは微小変化型ネフローゼ症候群と呼ばれる病変に対して劇的な効果を示すのですが、膜性増殖性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症、膜性腎症、ループス腎炎などではステロイド療法だけでは不十分なことがあり、難治性ネフローゼ症候群に進行することもあります。症状が改善したら、ステロイドは減量していきますが、いきなり投薬を中止することはなく、徐々に減らしていきます。また必要に応じて、免疫抑制薬を一緒に使用していきます。ステロイドの主な副作用を示します。

免疫抑制薬:

この薬はネフローゼ症候群、急速進行性糸球体腎炎、IgA腎症、ループス腎炎などに使用されます。とくにステロイドのみでは治療困難なネフローゼ症候群や悪化進行性リスクの高いネフローゼ症候群、ステロイドが使えない場合に単独または他剤と一緒に使用されます。また、ステロイドを減量や中止するときにも免疫抑制薬が使用されます。
現在、使用されている免疫抑制薬はミゾリビン、シクロスポリン、シクロホスファミド、アザチオプリンです。この薬の中で、保険適用となっているのはミゾリビンとシクロスポリンですので、この二つの薬について説明します。
ミゾリビンは、ステロイドのみでは治療困難なときにステロイドと一緒に使用されます。免疫抑制薬のなかでは比較的副作用の少ない薬ですが、主な副作用として消化器症状、過敏症、高尿酸血症などがあります。
シクロスポリンは、ネフローゼ症候群や臓器移植でよく使われる薬です。また薬物の血中濃度を測定しながら服用量が調整されます。副作用としては、歯肉腫脹、多毛、長期投与による腎障害、肝障害、血圧上昇などがあります。
いずれの薬も通常、効果がみられるまでには1〜2ヵ月かかりますが、有効なことが確かめられれば6ヵ月以上の長期服用が必要です。

抗血小板薬と抗凝固薬:

糸球体腎炎では血小板の粘着や凝集あるいは凝固系の亢進(血栓ができやすくなる)現象がよくみられるところから、ジピリダモール、塩酸ジラゼプなどの抗血小板薬や、ヘパリンやワルファリンカリウムなどの抗凝固薬が用いられています。