慢性腎臓病になりやすい人と主な疾患
慢性腎臓病と生活習慣
腎臓病は、生活習慣や加齢と深く関わっています。次のような人は、慢性腎臓病(CKD)になりやすいハイリスク群と考えられますので、特に注意しましょう。
- 高齢(加齢)
- CKDの家族歴
- 過去検診における尿異常や腎機能異常
- 腎形態異常
- メタボリック症候群(肥満、脂質異常症、高血圧、耐糖能障害、糖尿病)
- 高尿酸血圧
- NSAIDsなど、連用による腎毒性が指摘されている薬の常用
- 急性腎不全の既往
- 膠原病、感染症、尿路結石など
次に、多くの人にとっての危険因子、生活習慣病と腎臓病の関わりについて、より詳しく紹介しましょう。
高血圧との関係
腎臓と血圧は深く関わり合っています。塩分(食塩)を摂りすぎると高血圧を発症しやすくなりますが、腎臓は余分な塩分と水分を排出し、血圧の調節を助けています。しかし、高血圧が長く続くと腎臓の血管が傷み動脈硬化による腎臓病「腎硬化症」を発病しやすくなります。その結果、
1.腎臓の機能が低下し、尿として水分やナトリウムを排泄(はいせつ)する量が減り、体内に水分やナトリウムがたまる(体液・血液量が増える)、
2.動脈硬化などで腎臓への血流が減少すると、腎臓は血圧の上昇を助けるホルモンであるレニンの分泌を増やし、さらに血圧を上げてしまうという、悪循環に陥ると考えられています。
生活習慣病と腎臓病
不健全な生活習慣、例えば肥満の元凶となる食習慣や運動不足、喫煙等々は、糖尿病、脂質異常症、心臓病、脳卒中、高尿酸血症などいわゆる生活習慣病を引き起こします。これらは慢性腎臓病(CKD)とも深く関わり合っています。
糖尿病では、高血糖状態が長く続いていることにより腎症が引き起こされます(慢性腎臓病になりやすい主な疾患、透析療法に至ったもの上位3疾患[糖尿病性腎症]等 参照)。糖尿病性腎症は糖尿病の三大合併症の一つと言われています。
脂質異常症は、中性脂肪と悪玉コレステロール値が高く、動脈硬化の原因となります。脂質異常症は腎臓病だけでなく、心臓病や脳卒中を引き起こします。特に、心臓の血管の病気である狭心症や心筋梗塞、心不全は、慢性腎臓病と一体化して進むことから心腎連関と呼ばれています。
高尿酸血症では、血液中に増えすぎた尿酸が、腎臓に蓄積して炎症を引き起こします。これを痛風腎(読み:つうふうじん)といい、腎臓結石や尿路結石を併発することもあります。

慢性腎不全の原因について
日本透析医学会の「図説 わが国の慢性透析療法の現況」2013年末の全国調査によると、透析導入患者の原疾患の第一位は、糖尿病性腎症で43.8%、第二位が慢性糸球体腎炎で18.8%、第三位が腎硬化症で13.0%となっています。いかに上記の腎臓病患者が多いかわかります。ここでは、上位3疾患について、どのような病気かをみてみましょう。
糖尿病性腎症(糖尿病性腎臓病)
糖尿病は、膵臓から出るインスリンという血糖を下げるホルモンの分泌や働きが悪くなり、血糖値がコントロールできなくなる病気です。高血糖状態が続くと腎臓の糸球体が障害され、微量アルブミン尿やたんぱく尿がみられるようになります。これを放置しておくとネフローゼ症候群を発症したり、最後には末期腎不全に至ります。また高血圧や脂質異常症を合併して、全身の動脈硬化をきたすリスクが高い病気でもあります。糖尿病性腎症は、糖尿病にかかってから10年以上経過した人に多くみられます。
慢性糸球体腎炎
何らかの原因で糸球体に炎症が起こり、ろ過機能が低下する腎臓病の総称で、いくつかの種類があります。日本人に多いのは、のどや腸などの粘膜を守る役割をする抗体である免疫グロブリンA(IgA)が糸球体に沈着して炎症が起きるIgA腎症という腎疾患です。
腎硬化症
高血圧が持続することで腎臓の血管に動脈硬化がみられる状態をいい、良性と悪性に分けられます。悪性腎硬化症は、急速に腎機能が低下するのが特徴です。
ネフローゼ症候群とは
ネフローゼ症候群は、腎臓の障害により多量のたんぱく尿が出て、血中のたんぱく(アルブミン)量が不足し、コレステロール値が上がる状態のことをいい、もとの腎臓病の種類にかかわらず出現の可能性があります。症状としてむくみなどがみられます。長期間ネフローゼ症候群が続くと、慢性腎臓病になる危険が増します。