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旭化成株式会社

監修
順天堂大学名誉教授、(医社)松和会 理事長 富野 康日己 先生
大阪公立大学名誉教授、(社)生長会府中病院 腎・血液浄化研究センター
センター長 仲谷 達也 先生

腎臓は尿をつくる器官で、腰の少し上の背中側に背骨をはさんで左右に1つずつ(2つ)あります。人は毎日さまざまなものを食べたり、飲んだりしています。摂取した食物は栄養分を吸収したあとで尿や便として、尿には水に溶けやすいものが、便には水に溶けにくいものが排泄されます。多少の暴飲暴食をしても翌日の体重があまり変わらないのは、尿として体外に不要なものを排泄しているためです。

いろいろある腎臓の働き

腎臓には大きく分けると次の5つの働きがあります。

①尿をつくる・②体内環境を一定のバランスに保つ・③血圧を調整する・④血液(赤血球)をつくる働きを助ける・⑤ビタミンDの活性化

1. 尿をつくる

腎臓の代表的な働きは尿をつくることです。一つの腎臓にはネフロンという組織が約100万個あり、その一つ一つで尿がつくられています。ネフロンは、糸球体とよばれる毛細血管のかたまりとそれを包む部分(ボウマン嚢)および尿細管からなります(模式図)。

糸球体でろ過された血液(原尿)は尿細管を経て尿となり、尿中へは血液中の老廃物や不要物が余分な水分とともに排泄されます。

糸球体は血液をろ過して原尿をつくる。ボウマン嚢を通過して近位尿細管でナトリウム・カリウム・水・ブドウ糖・アミノ酸・尿酸などを再吸収、有機酸を分泌。ヘンレの系蹄でナトリウム・水を再吸収、ナトリウムや尿素を分泌。遠位尿細管でナトリウム・抗利尿ホルモンが働くと水を再吸収。水素イオンやアンモニアを分泌・集合管で水を再吸収(最終的な濃縮操作)
模式図:ネフロンのいろいろな働き

2. 体内環境を一定のバランスに保つ

尿細管はナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、重炭酸イオンなどのうち体に必要なものを取り込み、また、不要なものを尿中へ分泌して排泄しています。これにより、体内のイオンバランスを一定に保ち、血液を弱アルカリ性に保っています。通常、腎臓では絶えず血液がろ過されて一日に約150リットルもの原尿が作られていますが、尿細管で水分が再吸収されて1.5リットルほどの尿になります。

3. 血圧を調整する

腎臓でのろ過機能が円滑に働くには、血液の流れが一定に保たれている必要があります。腎臓では血液の流れが悪くなるとそれを感知し、レニンという酵素が分泌されます。レニンが血液中のたんぱく質と反応して生成されるアンジオテンシンIIが、血管を収縮させて血圧を上昇させます。腎臓はレニンの分泌量を増減させて血圧を調整します。

4. 血液(赤血球)をつくる働きを助ける

腎臓はエリスロポエチンというホルモンを分泌しています。エリスロポエチンは骨髄の造血幹細胞に働いて、赤血球の数を調整します。腎臓の機能が低下してエリスロポエチンの分泌が少なくなると赤血球も減少するため、貧血症状があらわれます。

5. ビタミンDの活性化

ビタミンDは肝臓で蓄積され腎臓に移ると活性型となり、さまざまな働きをします。活性型ビタミンDは小腸からのカルシウムの吸収を促進して、カルシウムの利用を高める作用があります。したがって、腎臓の機能が低下するとカルシウムの吸収が悪くなり、骨軟化症や骨粗鬆症などの原因になります。また、低カルシウム血症になると、筋肉痛、しびれ感、全身痙攣発作などが起こります。