前立腺肥大症の治療法のいろいろ

【監修】
名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科学 教授 後藤百万先生

前立腺肥大症の治療には、大別すると薬物治療、手術治療、保存治療の3つがあります。先に述べた、肉眼的血尿、尿路感染、尿閉、膀胱結石、腎機能障害などの前立腺肥大症による合併症がみられる場合には、手術治療が行われますが、それ以外の場合は、まず薬物治療が行われます。前立腺肥大症の手術治療としては、最近新しい技術が開発され、様々な治療法がありますが、内視鏡手術が標準的な手術として行われます。

薬物治療

前立腺肥大が尿の通過障害を引き起こす理由として、2つのメカニズムが考えられます。ひとつは、前立腺の平滑筋に対する交感神経の緊張が亢進して、前立腺(平滑筋)が収縮して、尿道を圧迫することによります。もうひとつは、前立腺の収縮とは関係なく、大きくなった前立腺が物理的に尿道を圧迫して、通りを悪くすることによります。こういったことから、大きく分けて2種類の薬剤が広く用いられます。ひとつは、前立腺平滑筋を弛緩し(緩め)尿道の圧迫を解除して、尿を通りやすくする薬剤です。もうひとつは、前立腺を小さくして、前立腺肥大による尿道の物理的な圧迫を軽減する薬剤です。前立腺の肥大には男性ホルモンが関与していますが、この男性ホルモンの前立腺に対する作用を抑えることにより、前立腺は縮小します。
(*薬物治療については、後述で詳しく解説します)

手術治療

薬物治療を行っても、症状の十分な改善が得られない場合や、前述したような肉眼的血尿、尿路感染、尿閉を繰り返す場合、あるいは膀胱に結石ができたり、腎機能障害が発生した場合には手術による治療が行われます。100g(mL)を超えるような巨大な前立腺肥大の場合には、開腹手術によって肥大した前立腺を摘出することがありますが、通常は、尿道から内視鏡を挿入して行う手術が行われます。最近では、レーザーを用いた、新しい内視鏡手術も行われています。

● 経尿道的前立腺切除術
(TUR-P: Transurethral Resection of Prostate)

尿道から内視鏡を挿入し、内視鏡の先端に装着した切除ループに電流を流し(電気メスと同じ)、肥大した前立腺を尿道側から切除する方法です。前立腺切除は、“かんなで木を削る”ように、少しずつ切除して、肥大した前立腺(内腺)を完全にくり抜くように切除します。前立腺肥大症に対する最も標準的で、広く行われている方法です。

● ホルミウムレーザー前立腺核出術
(HoLEP: Holmiumu Laser Enucleation of Prostate)

尿道から内視鏡を挿入し、レーザーを照射しながら、肥大した前立腺(内腺)と外腺の間を剥離して、内腺の部分を塊としてくり抜きます。くり抜いた内腺は、膀胱の中で細かく砕いて、吸引して取り出します。最近、広まりつつある手術方法で、大きい前立腺肥大に対しても少ない出血で行うことができます。

● 光選択的レーザー前立腺蒸散術
(PVP: photoselective vaporization of the Prostate by KTP laser)

尿道から挿入した内視鏡下に高出力のレーザーを照射して、肥大した内腺を蒸散(蒸発)させながら、切除します。非常に出血量が少なく、大きな前立腺肥大にも行うことができ、術後の尿道へのカテーテル留置期間も短い利点があります。

● 経尿道的マイクロ波高温度治療術
(TUMT:Transurethral Microwave Thermotherapy)

手術治療の中でも低侵襲治療に分類され、尿道から挿入したカテーテルからマイクロ波を発射し、前立腺組織を熱によって壊死させることにより前立腺内腺を縮小します。標準的手術方法であるTURPと同程度の治療効果があると言われていますが、再手術率が高いという報告もあります。

● 尿道ステント
(urethral stent)

前立腺により圧迫された尿道にステントという筒状のものを留置する方法で、内視鏡操作で行います。侵襲は低く、安全性も高いものの、合併症も多いため、寝たきりであったり、全身状態が不良であったり、手術が困難な場合のみに限られます。

保存治療

保存治療には、生活指導、経過観察、健康食品などがあります。水分を摂りすぎない、コーヒーやアルコールを飲みすぎない、刺激性食物の制限、便通の調節、適度な運動、長時間の座位や下半身の冷えを避けるなどの生活上の注意は、前立腺肥大症の症状緩和に役立ちます。症状や合併症のない前立腺肥大症は治療の必要はなく、定期的な経過観察を行います。健康食品については、ビタミン、ミネラル、サプリメント、ノコギリヤシなど、前立腺肥大症に有効と言われるものがありますが、科学的には有効性は示されていません。