前立腺肥大症の受診と検査

【監修】
名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科学 教授 後藤百万先生

検査項目

前立腺の専門的診察は泌尿器科で行います。必ず行う検査としては、【1】自覚症状の評価、【2】直腸内指診、【3】尿検査、【4】尿流測定、【5】残尿測定、【6】血清PSA(前立腺特異抗原)測定、【7】前立腺超音波検査があり、症例を選択して行う検査としては、【8】排尿日誌、【9】尿流動態検査、【10】血清クレアチニン値の測定、【11】上部尿路超音波検査などがあります。

必ず行う検査

【1】自覚症状の評価

自覚症状の程度(重症度)の評価には、症状質問票を用います。世界共通で用いられている国際前立腺症状スコア(図)は、7つの症状について、その頻度毎に点数がつけられており、患者さんが自分にあてはまるところに〇をつけることにより、前立腺肥大症の症状の程度をスコアで評価することができます。

症状とは別に、付随するQOLスコア質問票で、前立腺肥大症の症状がどれくらい支障となっているかを評価することもできます(図)。

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【2】直腸内指診

肛門から直腸に指を入れ、前立腺に触れることで、前立腺の形や硬さ、痛みの有無を調べます。前立腺に炎症があると強い痛みがあり、また前立腺癌があると硬い腫瘤を触れることがありますので、前立腺肥大症以外の疾患をチェックするのに重要な検査です。

【3】尿検査

尿の濁りや血尿の有無、尿路感染症の有無などを、肉眼的検査、および顕微鏡的検査などで検査します。

【4】尿流測定

トイレ型の検査機器に排尿すると、尿の出方がグラフで示され、尿の勢い(1秒間にどれくらいの尿が排出されるか)、排尿量、排尿時間などが自動的に数値化されて表示されます。簡便に排尿障害の有無や程度をスクリーニングすることができます。

【5】残尿測定

排尿直後に膀胱内にどれくらいの尿が残っているかを測定します。残尿測定は、排尿直後の下腹部の超音波検査により行うことができます。

【6】血清PSA(前立腺特異抗原)測定

PSAは前立腺から分泌される特異なタンパクで、血液検査により血液中のPSA濃度を測定することができます。PSAは前立腺癌のスクリーニング検査として有用で、正常値は4ng/mL以下ですが、前立腺癌があると正常値を超えて上昇します。4〜10ng/mLの上昇はグレーゾーンと言われ、前立腺癌以外に、前立腺肥大症や前立腺炎でもみられることがあります。

【7】前立腺超音波検査

超音波検査により、前立腺を描出して、前立腺の大きさ(体積)を計測します。超音波検査は、超音波を発信する装置を、下腹部からあてる、あるいは肛門から挿入する、いずれかの方法で行われます。直腸内指診では正確な前立腺サイズの評価は困難ですが、超音波検査により正確に前立腺サイズを評価することができます。

症例を選択して行う検査

【8】排尿日誌

排尿日誌は、排尿した時刻とその時の排尿量を24時間自分で記録するもので、排尿回数や1回の排尿量、また昼夜別の尿量を正確に知ることができます。頻尿の原因を知るのに役立ちます。

【9】尿流動態検査(圧尿流検査)

圧尿流検査は、尿道から膀胱にカテーテルを挿入して、膀胱に生理食塩水を注入しながら膀胱の内圧を測定し(膀胱の蓄尿機能を調べます)、膀胱が充満したら排尿して、膀胱の収縮圧と尿流測定を同時に測定する(膀胱の排尿機能を調べます)検査です。この検査により、蓄尿期においては、尿意が正常であるかどうか、過活動膀胱の有無、膀胱がどれくらいの尿を貯めることができるか、などを知ることができます。排尿期においては、膀胱の収縮力が正常かどうか、前立腺肥大による通過障害の有無あるいは程度を知ることができます。

【10】血清クレアチニン測定

前立腺が非常に大きく肥大していたり、多量の残尿がある場合に、腎機能障害の有無を調べるために、血液検査で血清クレアチニンという物質の測定を行います。クレアチニン値が上昇していれば、腎機能障害が疑われます。

【11】上部尿路超音波検査

クレアチニンの測定と同様に、前立腺肥大症の合併症として水腎症の有無(腎臓が腫れているかどうか)を調べるために腹部超音波検査により腎臓を描出して検査します。