前立腺肥大症の進行と合併症

【監修】
名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科学 教授 後藤百万先生

前立腺肥大があっても、必ずしもすべて治療が必要になるわけではなく、前立腺肥大によって起こる症状がどの程度か、またどれくらい生活の支障となるかが重要です。また、一般的には前立腺肥大症は加齢とともに徐々に進行しますが、前立腺サイズや症状がまったく変わらないことも少なくありません。したがって、前立腺肥大症でも自覚症状が軽度であれば、経過観察で様子をみればよいし、予防的に治療をする必要もありません。しかし、前立腺肥大症が進行すると、症状の悪化のみでなく、次のような様々な合併症を引き起こすことがあります。

肉眼的血尿

前立腺肥大のために、尿道粘膜の充血が起こり、前立腺部の尿道粘膜から出血して、血尿が出やすくなります。

尿路感染

排尿障害のために、膀胱内に残尿が残るようになると、尿路感染が起こりやすくなります。

尿閉

膀胱内に尿が充満しているにも関わらず、尿が出せない苦しい状態となり、これを尿閉(にょうへい)と言います。前立腺肥大が高度なほど(前立腺が大きいほど)起こりやすく、飲酒、風邪薬の服用が尿閉を引き起こす要因として頻度が高いものです。また、尿を我慢しすぎることが、尿閉を引き起こすこともあります。胃内視鏡検査を行う前に、胃の動きを止めるために注射(ブチルスコポラミン臭化物)を打ちますが、前立腺肥大症があるとこの薬が尿閉を引き起こすこともあるので、注意が必要です。

膀胱結石

膀胱内に常に残尿がある状態が長期間続くと、膀胱内に結石ができることがあります。

腎機能障害

膀胱内に多量の残尿が残るようになったり、排尿障害のために膀胱壁が高度に肥厚(厚くなる)すると、腎臓から膀胱への尿の流れが妨げられ、腎臓が腫れる状態(水腎症)となり、腎不全になることがあります。

溢流性尿失禁

溢流性(いつりゅうせい)尿失禁は、膀胱内に常に多量の残尿が存在するために、膀胱内にそれ以上尿が貯められなくなり、まるでダムから水が溢れるように、尿道から尿が溢れ出て、いつも尿がちょろちょろと漏れる状態を言います。
後述するように、前立腺肥大症に対しては、まず薬物治療が行われますが、上記のような合併症を発症した場合には、手術による治療が行われます。