2019年8月2日

旭化成ファーマ株式会社

ART-123の海外第3相臨床試験に関する今後の方針について

 旭化成ファーマ株式会社(本社:東京都千代田区、社長:青木 喜和、以下「当社」)は、当社の100%子会社である旭化成ファーマアメリカ(Asahi Kasei Pharma America Corp.本社:米国マサチューセッツ州ウォルサム、社長:高田 実)が開発を行っているART-123(一般名:トロンボモデュリン アルファ(遺伝子組換え)、日本での販売名:「リコモジュリン」)について、「凝固異常を伴う重症敗血症」を対象とした海外第3相臨床試験に関する今後の方針を決定しましたのでお知らせします。
 当社は、これまでに海外第3相臨床試験(SCARLET試験;n=800)のデータを詳細に解析し、以下の点を明らかにしてきました1,2)

  1. 1.主要評価項目の「28日後の死亡率」について対照(プラセボ)群との間で統計学的な有意差は認められなかった。28日後の死亡率は、本剤群26.8% (106/395症例)、対照群29.4% (119/405症例)で、その差は2.55%であった。一方、薬剤投与直前まで凝固異常が持続していた患者集団(n=634; PT-INR>1.4かつ血小板数>30,000/mm3)では、本剤群と対照群間での28日後の死亡率に5.40%の差(本剤群26.7% (82/307)、対照群32.1% (105/327))が見られた。
  2. 2.凝固異常を示すマーカーであるトロンビン-アンチトロンビン複合体、プロトロンビンフラグメントF1+2濃度の薬剤投与前値と、本剤群並びに対照群の28日後の死亡率の相関を確認したところ、これらのパラメータが正常範囲よりも高い濃度域(特にそれぞれの中央値以上の高濃度域)では、本剤群の死亡率は対象群と比較して低い傾向を示していた。このことは、凝固異常を示す患者集団では対照群と比較して本剤群の死亡率が低くなる可能性を示すものであり、上記1の解析結果を支持するものであった。

 これらのSCARLET試験データに基づき、当社はFDA(米国食品医薬品局)と次試験の試験デザインについて協議し、新たに『薬剤投与に近いタイミングでの凝固異常の再確認』を設けた試験デザインについて合意しました。今回のFDAとの協議を踏まえ、当社としては米国の臨床試験登録サイト(ClinicalTrials.gov)に登録していた2本目の海外第3相臨床試験(SCARLET-2試験)を中断し試験デザインを見直した上で、共同開発やライセンスアウトも含めて今後も当該適応症での開発を進めていくことを決定しました。

 なお、SCARLET試験の対象は、心血管系機能障害もしくは呼吸機能障害を有する敗血症で、凝固異常(PT-INR>1.4かつ、血小板数が30,000/mm3より多く150,000/mm3より少ない若しくは24時間以内に30%を超える減少)を伴う患者です。本開発で目指す適応症は、凝固異常を伴う重症敗血症であり、ART-123の日本国内の適応症である汎発性血管内凝固症候群(DIC)とは異なります。

 当社は、引き続きSCARLET試験の試験結果について学会報告並びに論文発表を行っていく予定です。

1) JL Vincent et al, JAMA 2019, 321(20), 1993-2002
2) D Fineberg et al, presentation at ISTH 2019

<ご参考> 用語のご説明

1.ART-123/「リコモジュリン」
 遺伝子組換え技術を用いて生産したヒトトロンボモジュリン製剤。トロンボモジュリンは、血液凝固の原因物質であるトロンビンの生成を抑えることにより抗凝固作用を発揮する。また、トロンボモジュリンは抗炎症作用ももつことが近年報告されている。2008年に汎発性血管内血液凝固症(DIC)の治療薬として日本国内で承認されている。

2.凝固異常
 一般に全身的な血液凝固の異常な亢進がある状態を指す。敗血症における凝固異常は、エンドトキシンなどによる炎症性サイトカインネットワークの活性化を介して凝固系の過度の活性化によって引き起こされる。

3.敗血症
 「敗血症」および「敗血症性ショック」は、「敗血症および敗血症性ショックの国際コンセンサス定義第3版(Sepsis-3)」により、以下のように定義されている。
 ・敗血症は、感染に対して宿主生体反応の統御不全により臓器機能不全を呈している状態(従来の定義の重症敗血症に相当)。
 ・敗血症性ショックは、敗血症のうち、循環不全と細胞機能や代謝の異常により、死亡率が高くなった状態。

4.SCARLET; Sepsis Coagulopathy Asahi Recombinant LE Thrombomodulin

5.PT-INR(prothrombin time-international normalized ratio; プロトロンビン時間国際標準比)
 血液の凝固異常を評価する血液検査値の一つで、外因系及び共通系の凝固異常を判定する検査として用いられる。PT-INRは1.2を超えると凝固異常とされ、SCARLET-1試験では後期第2相臨床試験の結果に基づいて適切な患者層を選択するため、PT-INR>1.4を登録基準に採用している。

6.28日後の死亡率
 治験薬投与開始後28日以内に死亡が確認された症例の割合。なお28日後の転帰が不明の症例は本剤群、対照群それぞれに1例ずつであり、治験責任医師の評価では、被験者と最後に連絡が取れた時点の健康状態から28日後に生存している可能性が高いと判断されている。

7.トロンビン・アンチトロンビン複合体
 血液の凝固異常を評価する血液検査値の一つで、血液凝固系の活性化を知る指標である。血液凝固を促進するトロンビンとその生理的阻害因子であるアンチトロンビンとの複合体である。

8.プロトロンビンフラグメントF1+2
 血液の凝固異常を評価する血液検査値の一つで、血液凝固系の活性化を知る指標である。血液凝固を促進するトロンビンの前駆物質であるプロトロンビンの分解産物である。

以上

【本件に関するお問い合わせ先】
旭化成ファーマ株式会社      総務部 TEL:03-6699-3600
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